
中国茶芸の作法」では主に道具の使い方を中心にご紹介しておりますが、
このコーナーでは、茶葉を四つのタイプに分けて、おいしく入れるポイント
をご紹介したいと思います。
中国茶をおいしくいただくには湯の温度がとても重要になってきます。
湯の温度が合わないと、せっかくの味も香りも変わってしまうのです。
基本的に、発酵していないものは低い温度、発酵度が高くなるにつれて
高い温度で入れるとよいと覚えておくとよいです。
ポイントを押えることで中国茶のおいしさを引き出して、よりおいしく
いただくことが出来ますので、ぜひこのコツをつかんでみてください。
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●ジャスミン等花茶系●対象:花茶、緑茶、白茶、黄茶 |
湯の温度:75〜85度
茶器を選ぶ:蓋碗はベスト、グラス・瀬戸物急須ベーター、紫砂土瓶系はだめです。
香りや見た目を楽しみたいのであれば、透明のグラスのものがオススメ。
茶器を予熱します。
茶葉の量を量ります。
『茉莉珍珠』140mlの蓋碗なら5〜6g,「茉莉花茶」なら4〜5gを入れます。
飲み頃の時間:
・1 煎目はお湯を注いでから2分(香りが強く、味はまだ薄い)
・2 煎目は2分(香り、味ともに最高)
・3煎目は2.5分
・4煎目は3分
『茉莉珍珠』は5煎以上まではできますが、「茉莉花茶」は4煎までです。
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●工芸茶系●対象:一見鐘情、千日紅、海貝吐珠 |
湯の温度:85〜90度
茶器を選ぶ:見た目の美しさや香りを楽しむために、大き目の耐熱ガラスカップ(180cc前後)がオススメ。
耐熱ガラスのティポットを使用して、注ぎ分けて飲む事も出来ます。
茶器を予熱します。
茶葉の量を量ります。工芸茶は180ccに対し1粒(約5g〜6g)です。
飲み頃の時間:
・細かい泡とともに香りが漂ってきます。
茶葉の中から花が美しく開いて、お茶が独特の黄金色になります。
3分ぐらい蒸らすと工芸茶が完全に開きますとちょうとよい飲み頃です。
・何も加えずにそのままお飲み下さい。お茶は全部飲みきらず、
半分になったらお湯をつぎたしてお飲み下さい。
10分以上放置しておいても、濃くなりすぎて飲めなくなる事は有りません。
3〜4煎はお楽しみいただけます。渋みが無く、濃くなっても淡いままでも美味しく飲めます。
渋みが無く、濃くなっても淡いままでも美味しく飲めます。
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●烏龍茶系●対象:青茶 |
湯の温度:95度〜
美味しい凍頂烏龍茶・鉄観音・水仙の方程式:
良質のお茶+お茶に合う専用茶器+美味しい水+時間チェック+水温コントロール
茶壷を選ぶ:茶壷に似ている種類のお茶を入れ続けるのが理想です。
紫砂で作られたものは、保温性、通気性において特に優れていますのでお勧めです。
サイズを選ぶ:4人前用の茶壷(160ml〜180ml)がベーター
茶器を予熱する:
茶壷に熱湯を入れ、茶壷の熱湯を茶海に移します。
茶葉の量を量る:180mlの茶壷なら10G,を入れます。ケチするといい味はでません。
・1 煎目は、1分以内、55秒抽出し。(注1)
・2 煎目は、50秒抽出し。(注2)
・3 煎目は、65秒抽出し。
・4 煎目は、80秒抽出し。
STET UP
注1:高級茶はお茶の粉も発生していないから捨てなくても良いです。
1煎目のお茶はゆっくり冬眠状態から目さめますので2煎よりやや時間長めです。
注2:2 煎目以降は15秒づつ時間を延長します。
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●東方美人● |
沢山の芽を含む東方美人は熱湯に弱いです。
湯の温度:85度前後、100度の熱湯をワンクッション他の器に移ってから使えば、約85度になります。
茶壺サイズを選ぶ:4人前用の茶壷(160ml〜180ml)がベーター
茶器を予熱する:空の茶壷に熱湯を入れ、茶壷の熱湯を茶海、さらに茶海に移します。
茶葉の量を量る:180mlの茶壷なら10G(約茶壺の半分)を入れます。
・1 煎目は、1分以内、55秒抽出し。
・2 煎目は、50秒抽出し。
・3 煎目は、65秒抽出し。
・4 煎目は、80秒抽出し。
・5 煎目は、95秒抽出し。
東方美人は特にもちがよく6煎以降でもできます。茶量、水温、時間の微妙な調整よりもっと
お客様自身らしい淹れ方はいかがでしょうか。 |
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●プーアール茶系●対象:黒茶、紅茶 |
湯の温度:100度
入れ方のポイント:
必ず沸騰したお湯を使います。最初のお湯を入れたらすぐ捨ててください。
次を一煎目にします。
・一煎目は2分
・二煎目は3分
・三煎目が4分くらい
カビの臭いが気になる人は慣れるまで薄めに入れたり、レモンスライスを入れたりして
飲むとよいでしょう。 他の中国茶に比べてカフェインやタンニンの含量が少ないので、
飲み過ぎない限り眠れなくなることはないようです。
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●茶葉と茶器の関係● |
中国茶の急須というと、クラッシックな赤茶色をした素焼きの小さな急須を目にするかと思い
ますが、この素焼きの茶器は、実は使い込むほどにツヤが増し、美しく変化していきます。
お茶の味や香りも染み込んでいく為、1つの茶壷で1種類の茶葉を専用に使用していきますと、
より一層お茶の味も深くなっていくという利点があります。
日本でいう、「土鍋」に似ているかも知れません。土鍋もその素焼きの肌に魚介類や野菜の
うまみを吸収して、使えば使うほどにいい味が出る、なんて言いますよね。

台湾では、友人知人が集まった席で工夫茶式で烏龍茶を楽しむ際に、お茶の出を待つ間、なにやら
しきりにやっているのを見かけ、「今これは何をしているのですか?」と聞いてみました。
茶盆にこぼしたお茶を筆に染み込ませ、茶器に塗っているのです。そうすることで茶器のツヤが
増し、より深く美しい光沢になるのだといいます。(下記「養壷」参照。)
お茶の愛好家の間では、このようにして茶器をより美しく育てていくことももう1つの楽しみの
ようでした。なんとも優雅で奥深い楽しみ方もあるのだと感嘆しました。

話しは戻り、いろいろな茶葉の味を楽しみたいのであれば、逆に素焼きの茶器は不適当ということ
になりますね。磁器の茶器やガラス茶器でしたら香りも染み込みにくいので、オールマイティー
に使用できて便利かと思います。
茶杯も、内側が白い釉薬で覆われているものの方が、お茶本来の色がよくわかり、器に残った
香りをたのしむことができます。
1つの茶葉に限定して味と香りをより深く楽しみつつ、茶器を育てるもよし、その日の気分で
いろいろな味と香りを使い分けて楽しむもよし、その用途に応じて茶器の選び方も左右される
ということを知っておくとよいですね。
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●お水とお茶の関係●
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よい茶葉の次は、よい水です。茶のうまさは、お茶そのもののうまさにも依りますが、
台湾ウーロン茶産地の泉水はもっともウーロン茶のおいしさを引き立てます。
おそらく烏龍茶生産者は地元の泉を使って日々烏龍茶の品質をコントロールしているからです。

また、お茶の味は水の硬度、品質と関係があります。軟水はお茶の中の成分を溶けやすい
から、お茶の味が濃くなります。逆に硬水を使うと、お茶が渋くなったり、苦くなったりするので、
お茶を作る時、軟水が一番いいです。

お茶を飲むときの水は、水道水ならば、備長炭、麦飯石をいれて半日くらい汲み置きしたもの
を沸騰させてカルキをとばしたものを使用すると良いです。
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●養壺●(ヤンフー)●
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台湾には「養壺(ヤンフー)」という習慣があり、気に入った(陶器の)急須を大切に使い込むこと
をいいます。急須は古い方が美味しい、と言われています。
長年使っていると烏龍茶の香りや成分をたっぷり吸収・蓄積(育て)していき、お湯をいれただけ
で香りがするようになります。
同じお茶でも、使い込んだ急須と新品の急須では、全く味が変わります。
「養壺」とは、茶器(注記)を同じお茶で育てることなのです。
注記:瀬戸物など表面に釉薬を施したものはまったくお茶の成分と香りを吸収しないから、養壺できません。
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